「組織内人材最適化プログラム」Pra★stor プラスター
Pra★stor(Program for Adapting Staff in Organization)
■コラム
パレートの法則
「パレートの法則」というのをご存知でしょうか。
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則で、経済において、全体の数値の大部分(8割)は、全体を構成するうちの一部(2割)の要素が生み出している、というものです。
パレートの法則は、「働きアリの法則」と同じ意味合いで使用されることが多く、組織全体の2割ほどの要人が大部分の利益をもたらしており、その2割の要人が間引かれると、残り8割の中の2割がまた大部分の利益をもたらすようになる、というものです。
しかし、残念ながらこの法則に科学的根拠はありません。たとえアリの世界に成り立つとしても、人間の世界にも同じように成り立つとするなら、それはあまりにも極端な「還元論」(ある部分に成り立つ法則は、それを含む全体にも成り立つ、とする推論方法)であり、還元論は立証方法としては偏りすぎています。
パレートの法則は1900年代には批判され、現在では、所得分布に関して局所的にのみ有効である、とされています。
もしあなたの組織で「パレートの法則」が成り立ってしまっているとしたら、それは20世紀型の経営体質の弊害だと、私は考えています。
人間の気質や体質、あるいは能力の発揮の仕方に、本来「パレートの法則」など存在しません。この法則が成り立つとしたら、単にその組織が「2割の人間が残り8割に対して実権(決定権)を握り、統制的に管理している」という証拠でしょう。組織にとって最も重要で、最も扱いが難しい「人材」というリソースにとって、これほどもったいない活用の仕方はありません。
■20世紀型経営と21世紀型経営
たとえば、ある会社の営業部門を考えてみましょう。営業部長が一人いて、副部長(部長補佐)が1~2人いて、その他に事務方が数名、そして100人の営業マンを抱えているとします。月末や年度末には、営業成績の順位が発表され、トップは表彰され、ボーナスアップされ、下位の者は部長から発破をかけられます。こういう体制だと、営業成績をめぐって100人の営業マン全員がライバル関係になり、社内競争が激化します。この体制は一見すると、営業成績をどんどん上げるように思えますが、実は月末・年度末には、一人の勝者と99人の敗者、そして100人分の疲労を作り出すだけです。ライバルとは社内にいるものではなく、本来は「競合他社」のはずです。これが20世紀型の経営でした。
一方、たとえば営業マン10人に対して、世話役・支援役・相談役が一人ずつついているチームを10チーム作ったとします。普段はチームごとに活動し、チーム同士は特にライバル関係にあるわけではありません。むしろ、それぞれのチームに「カラー」といったものが出来上がり、チーム同士は、それぞれの「カラー」を認め合っているとします。そこで、あるチームに重大な案件が持ち上がったとき、複数のチームの合同プロジェクトとして対処することも可能になってきます。
こういう場合、互いにライバル同士の関係性では、嫉妬や足の引っ張り合いが生まれてしまったりします。
組織の経営体質を20世紀型から21世紀型に変換することの難しさはそこにあります。
こうした経営体質の自然なイノベーションを誘発するのが、「グループワーク」です。
つまり、合同作業が必要になる実際のタスクが発生する前に、相性がよく、持ち味(役割)が被らないようなメンバーによるチームを作り、そのチームでの何らかの活動を始めておくことで、そのチームの「カラー」を醸成させておくのです。これによって、大きなプロジェクトが発生した場合、そのプロジェクトの性質に合わせた合同チームの編成が容易になってきます。